日本の春は新学期、新年度が始まる時期です。
大学や各種専門学校、日本語学校も同様に、多くの留学生たちが、日本で新しい生活を始めていることでしょう。
その留学生たちが日本人学生と同じようにアルバイトをしようとする場合。
飲食店やコンビニ、配達、工場など色々と職種はあると思いますが、雇う際に外国人留学生ならではの注意点があります。
今回の記事では、雇用主が留学生を雇うにあたって、必ず押さえておくべき大事なポイントを解説していきます。
一歩間違えると、雇う側も法律違反となりかねないので、しっかり理解して正しく留学生アルバイトを受け入れていきましょう。
この記事を読むと分かること
・留学生について知っておきたいこと
……「在留資格」って?
・留学生のアルバイトには制限がある!?
……「資格外活動許可」って?
・留学生採用時のチェックポイント
…… 「在留カード」って?
・法令違反リスクから自社を守るためにできること
…… 「労働時間28時間ルール」って?
1:資格外活動許可のキホン|なぜ留学生は勝手に働けないのか?
★何の在留資格を持っているかの確認
★資格外活動許可の有無を確認
1-1:「留学ビザ」の本来の目的と就労制限
まず、日本に在留する外国人は、全員何らかの「在留資格」を持っています。
そして、その在留資格に応じて決められた範囲での活動のみを行う、ということになっており、就労という点で「働ける資格」と「働けない資格」に分けられます。
留学生の持つ「留学」の在留資格(注:いわゆるビザ、と広く言われているものですが、本来のビザ=査証とは違います。)は「働けない資格」に入ります。
できるのは「各種学校において教育を受ける活動」となっており、もし短時間でもアルバイトでも、就労を希望する場合は、許可を得なければならないとされています。
1-2:許可なしアルバイトは「不法就労」!強制送還のリスクも
外国人が日本に在留する上で、その在留資格に応じた活動をしているかどうか、ということは、かなり厳しくチェックされます。
もしも実態が異なっている場合は、日本に在留することができなくなることもあり得るくらい、重大なことです。
留学生のもつ「留学=働けない資格」というのはつまり「働いてはいけない資格」であり、働くのであれば「許可を得る」のが条件となります。
その許可を得ずに働くと「不法就労」ということになり、出入国管理及び難民認定法(入管法)違反となる可能性があります。
1-3:在留カードの裏面をチェック!「許可の有無」の見分け方
それでは、不法就労にならない、させないために、どうすれば良いのでしょうか?
ここでは雇用主側でのポイントをお伝えします。
まず、留学生(に限らず、外国人全てに言えます)を雇うときは、在留カードを見せてもらいましょう。
表面には在留資格「留学」と記載があるはずです。
そして裏面に就労許可があるかどうかの記載があります。
そこに「許可」とあれば、その許可の範囲内で働いても良いことになります。
留学生本人が「大丈夫」と言っても、それをうのみにせず、雇用主自らが確認する義務があります。
2:【重要】28時間ルールの全知識|掛け持ち・長期休暇の罠
★週28時間を超えないよう管理
★ダブルワークの有無を管理
2-1:「週28時間以内」は合計時間!ダブルワークの落とし穴
では就労の許可をもつ留学生であれば、どれだけでも働けるのか?というと、そうではありません。働ける時間数が決められています。
「週に28時間以内」これが留学生が許可を得て働ける時間数の上限です。
この28時間以内の数え方に注意が必要なのです。
(例1)留学生が昼と夜、違う場所でアルバイトをしているケース
それぞれの雇用主はダブルワークだと認識せず、自分の事業所で働いた時間数だけを見て、28時間以内に収まるようにと計算していた場合。(下の図を参照してください。)
➡2か所合わせると、28時間/週を超えているかもしれません。全てのアルバイト先での労働時間を合計して、28時間以内に収まっていなくてはなりません。
この点は、留学生本人も誤解している場合があるので、本人によく確認をして把握しておく必要があります。

(例2)曜日によって時間数が安定せず、長い日と短い日が混在しているケース
いつも決まった曜日からの1週間だけをみて時間数を計算していると、実は時間数の制限を超えていた、という場合があります。
下の図では、毎週月曜日から数えると週28時間以内となっています(AとC)が、木曜日から数えてみると週32時間(B)となってしまっています。
➡特定の週だけでなく、継続的に週28時間を超えないようにしなくてはなりません。

2-2:夏休み・冬休みは「1日8時間」までOK?正しい計算方法
留学生は学校が定める夏休み、春休みと言った長期休業期間中に限り、通常よりも長い時間、働くことが認められています。
1日8時間までOKという訳です。
ただしこれも、複数掛け持ちしてアルバイトをしていたりする場合は要注意!
両方の職場とも、他での労働時間を把握できず、結果的に1日8時間を超えていた…というケースがよくあります。
ついつい頑張りすぎてしまう長期休暇…雇用する側が特に気を付けなくてはなりません。
また、一般的な労働基準法なども当然適用されますので、1日8時間まではOKと言っても、1週間の労働時間が40時間を上回ることはできません。
2-3:【注意】1分でも超えたらアウト?更新不許可になるライン
この労働時間の制限について、どの程度までならオーバーしても許容範囲か?と聞かれることがありますが、当然、決まった範囲はありません。
オーバーしてはいけないのです。
たった1回だから…、たった1時間だから…、と言っても、入管庁がどう判断するかは、一切こちらからは推測することができません。
在留資格や資格外活動許可の更新の際、それまでの在留状況は厳しく確認されます。
隠したつもりでも分かってしまうのです。
3:やってはいけない「禁止業務」|風俗営業の定義は意外と広い
★「風俗営業」の範囲に注意!
★やってもらって大丈夫な仕事とは?
3-1:包括許可と個別許可の違いをわかりやすく解説
資格外活動許可には2種類あります。それは「包括許可」と「個別許可」です。
ふたつの違いを簡単に言うと、「どこでなにをやるか?」が決まっているかどうか、ということになります。
「包括許可」…労働時間の制限はあるが、特に仕事の内容は指定されない
「個別許可」…どこで(場所)、何を(内容)、どのくらい(期間)やるかが指定されている
「包括許可」であれば、本来その外国人がすべき活動(留学生であれば学業)に支障をきたさない範囲で、比較的自由に仕事を選ぶことができます。
留学生のアルバイトとしては、日本人学生のアルバイトが社会通念上広く認められていることもあり、「包括許可」が与えられることが多いです。
3-2:パチンコ店・ゲームセンター・キャバクラ(キャッチ)はNG?
留学生は「包括許可」を得て1週間28時間以内であれば、日本人同様、幅広いアルバイトが可能ですが、どんな仕事でも大丈夫なのでしょうか?
そうではありません。やってはいけない種類の仕事もあるのです。
パチンコ店やマージャン店、バー・キャバクラなどの呼び込み、深夜営業のライブハウス…など、風俗営業として区分されている業種で働くことは禁止されています。
お酒を出している、夜の営業をしている、繁華街で営業している…など、全てダメなのかと誤解の多い部分ですが、一般的な飲食店営業であれば問題のないケースも多いです。
風営法上の営業許可がどうなっているのか?を確認して判断します。
うっかりやってしまいがちなのが、昼と夜とで業態を変えて営業しているお店などです。
昼間は食事中心の飲食店、夜の決まった時間からはお酒中心でスロットやダーツなどのゲームを楽しめるバー営業を行っている…このケースでは、昼間ここでアルバイトをすることは問題ありません。しかし、バー営業時間帯に働くことはできないので、働く時間帯を限定する必要があります。
もしもこのようなお店でアルバイトをするのであれば、タイムカードなどできちんと午前〇時~午後〇時と勤務時間が分かるように、証拠を残しておくとより安心です。
3-3:個別許可が必要なケース(インターンシップ・特殊な報酬)
では、留学生の中で「個別許可」が必要になるケースとはどんな仕事でしょうか?
例えば…
・特定の企業においてインターンシップを行うケース
・個人事業主として小規模な事業を行う場合で労働時間が把握しづらいケース
・業務委託契約や請負契約などで従事する業務の労働時間が明確でないケース
などがあります。
自社で留学生を雇う場合、包括許可で大丈夫か、それとも個別許可が必要か、どちらか不明だったり迷ったときは、行政書士など専門家に確認してみることにしましょう。
4:【実務編】資格外活動許可の申請方法と審査期間
4-1:必要書類はこれだけ!申請書の書き方と入手方法
留学生が資格外活動許可を申請するとき、実際にどうすれば良いのか?ということに少し触れておきます。
申請書は1枚だけで、氏名・国籍・旅券番号・在留資格など基本的な事項を記入すれば足ります。
個別許可を得ようとする場合や、在留状況(本来の活動に支障をきたしていないか確認をもとめられる場合)によっては4のその他の書類が必要になります。
【申請方法】
1.本人または代理人などが必要書類を管轄の入管庁窓口へ持参
2.書類審査を経て、許可の通知が郵送されてくる
3.許可通知はがきを窓口へ持参して許可証の交付を受ける
4.在留カードと同時交付であれば、カードの裏面に記載され、パスポートに証印シールが貼られます。同時でなければ資格外活動許可証が交付されます。
4-2:待ち時間はどのくらい?審査期間の目安と即日交付
資格外活動許可の申請をしてから許可が下りるまでの標準審査期間は、2週間~2ヶ月となっており、実際には申請を行う入管庁によっても変わってきます。
ですから、スケジュールには余裕を持って申請する必要があります。
また、留学生として新規に日本に入国する際、空港で資格外活動許可申請を行うことも出来ます。その場合は、即日許可をもらうことができます。
留学生が当初から日本でのアルバイトを希望しているならば、どこで働くかが決まっていなくても、入国時に資格外活動許可を得ておくのが良いでしょう。
4-3:【便利】オンライン申請と入管窓口、どっちが早い?
入管庁への各種申請は、現在オンラインでも行うことができ、24時間365日、時間を選ばずに申請ができるメリットがあります。
資格外活動許可についてもオンラインでの許可申請が可能ですが、条件として、下記の申請と同時に行う場合のみ、となっています。
・在留資格変更許可申請
・在留期間更新許可申請
・在留資格取得許可申請
以上のいずれかと同時に行うのであれば、オンライン申請の利用が可能です。
申請後に添付資料を郵送する必要がありますが(個別許可の場合)一日時間を取って入管窓口へ出向かなくても良いのは、大きなメリットと言えますね。
ただ、資格外活動許可を単独で申請する場合は、窓口での書類提出が必要です。
5:企業・雇用主が絶対に確認すべき3つのポイント
★まずは在留カード原本を確認
★ハローワークへの届出必須
5-1:採用時に必須!在留カードの「偽造」を見破る方法
ここまで留学生がアルバイトとして働くには、資格外活動許可が必要だとお伝えしてきました。
裏を返すと、留学生をアルバイトとして雇うには、資格外活動許可を得ているかどうかを確認しなくてはならない、ということです。
冒頭でも申し上げましたが、まずはその学生の在留カードを見せてもらいましょう。
そこに就労「許可」と書かれているかどうか?
その許可の内容は「週28時間以内」の包括許可となっているかどうか?
ここを確認します。
ただ、一つ留意すべき点が、偽造の在留カードを持っているケースもある、ということです。
巧妙に作られた偽造カードを、目で見て確認するだけで見破るのは困難です。
そのため、在留カードの確認には「在留カード等読取アプリ」を使用するのがおすすめです。
5-2:ハローワークへの届け出は義務?雇用時の事務手続き
在留カードや資格外活動許可を確認して留学生を雇った後、他にもまだやらなければならないことがあるでしょうか?
「あります」→ハローワークへの届出は義務です!
労働施策推進法に基づき、外国人を雇用した事業主は「外国人雇用状況の届出」を行うと定められています。
外国人雇用状況届出書に必要事項を記載の上、就労する場所の住所を管轄するハローワークの窓口に提出、もしくはオンラインで行うことも出来ます。
この届出は、雇入れ時だけでなく、留学生が退職した時にも必要です。
雇入れ、退職ともに翌月の末日までとなっているので、忘れないように行いましょう。
5-3:知らなかったでは済まない「不法就労助長罪」の恐怖
資格外活動許可を得ていない留学生を働かせること。
週に28時間以内、学校の定める長期休業期間中であれば1日8時間(週に40時間以内)を超えて働かせること。
どちらも雇用主は「不法就労助長罪」に問われます。
雇用主には確認する義務がありますので、きちんと雇入れ時、また随時にも在留期間と資格外活動許可の更新を行っているかの確認をしておくのが安心です。
そしてダブルワークについては、留学生本人から他の就労先での労働時間や日数を聞き取り、オーバーワークになっていないかどうか、気を付けなくてはなりません。
この確認義務について補足しますと、日本語も上手で一見して留学生であるとは分からない、そんなケースについてはどうなるのか?
ハローワークの「外国人の雇用に関するQ&A」には、「在留資格などの確認は、通常の注意力を持って、雇い入れようとする人が外国人であると判断できる場合に行ってください」と書かれています。

(厚生労働省)5.外国人雇用状況届出の注意事項等について
参考PDF『外国人雇用はルールを守って適正に』より抜粋
6:違反したらどうなる?将来の「就職ビザ」への影響
★その場限りで終わらないオーバーワークの悪影響
★先を見据えた労務管理が必要
6-1:オーバーワークが原因で在留資格の変更が不許可に?
留学生の中には「今だけ良ければいいや」という考えや、必要に迫られてお金を稼ぎたい!と不法就労状態になってしまう場合があるかも知れません。
雇用主も知らずにそれに加担してしまったたとしても、在学中に問題が表面化しなければそれで良いのでしょうか?
卒業後、きちんと就労可能な在留資格に変更して、日本で働こうと思ったとき、それまでのアルバイトとしての働き方によっては、それが出来なくなってしまうこともあり得ます。
外国人は、在留資格に応じて認められた範囲の活動のみができるということになっています。
もしもそれ以外の活動を行っていた場合(オーバーワークや許可がないままのアルバイト)=在留状況が悪い、素行不良ということになり、在留資格変更が認められなくなってしまうかも知れません。
実際に、せっかく就職先が内定したのに、オーバーワークが在留審査の上で問題視されるケースはあります。
そして申請で許可が下りなければ、帰国せざるを得ない場合も出てくるのです。
6-2:本人だけでなく会社側も責任を問われる?
この不法就労ということに関しては、雇っていた側も不法就労助長罪という罪に問われます。
この不法就労助長罪に対する罰としては
| 現行 | 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(またはその併科) |
| 改正法施行後(2027.4~) | 5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金(またはその併科) |
2025年の法改正によって厳罰化されることが決まっており、決して軽い罪ではないことが分かります。
6-3:法律違反とならないために…行政書士が教える対処法
留学生のアルバイト採用におけるリスクを減らすため、できる対策をまとめました。
①まずは雇入れ時の確認を徹底する
在留カードの記載、資格外活動許可の有無など、きちんと原本を見て、読取アプリ等を活用してしっかり確認すべきです。
また、在留期間の更新やカードの有効期限の更新、資格外活動許可の更新などを忘れないこと、他にもアルバイトをするなら報告すること、学校を退学、除籍等になった場合も報告すること、など誓約書を作成し、留学生にも理解してもらうことが必要です。
②自社での労働時間、労働日数の適正管理
タイムカードを使用する、記録を付けるなどして、オーバーワークにならないようにします。
同時に、留学生の本来の活動である学業に支障をきたすようなシフトとならないように気を付けます。
※特に長期休業時の取扱いには注意!
長時間働きたい留学生、忙しいので長時間働いてほしい雇用主側、利害が一致したところでオーバーワークとなってしまいやすいです。
③留学生の届出関係の担当者を決める
誰がやるのか決まっていない、という状態では届出もれや届出忘れが発生します。
雇入れ時および退職時のハローワークへの届出は、一元管理を行うようにしましょう。
以上、留学生をアルバイトとして雇う場合の基本的な確認事項、留意点などをお伝えしてきました。
日本に学びにやって来た留学生にとって、アルバイトを通して日本社会や日本文化に触れることは、その学生自身が成長する貴重な機会といえます。
雇用する側としては、留学生という若い人材を生かし、自社を活性化させるとともに、思わぬところで法令違反というリスクを冒さないために、適正な雇用に努めて下さい。
7:まとめ
外国人の雇用に関しては、日本人と同様に労働法関係で守るべき基準があり、外国人ならではの「在留資格」に関する基準もあります。
・この外国人、この留学生は雇っても大丈夫だろうか?
・どんな仕事を任せられるんだろう?
・雇う場合に必要な手続きや届出はどうすれば良いのか?
こんなご不安やお悩みを抱えていらっしゃるときは、ぜひ専門の行政書士に問い合わせをしてみて下さい。
その留学生や外国人が、雇っても大丈夫なのかどうか?といった初めの一歩からご相談にのることができます。
そして、雇う際の手続きやその後の労務管理などに関しても、外国人特有の事情を踏まえたうえで、法令違反のリスク低減に向けたアドバイスをさせていただきます。
お気軽にLINE、メール、お電話などでお問い合わせお待ちしております。
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