周りを海に囲まれた島国日本ですが、街中や生活の場で外国人の方を見かけることは、都会だけではなく地方であっても珍しいことではありません。
縁あって日本にやって来て、その後、勉強したり働いたりしながら日本で長く生活している外国人の方も、たくさんいらっしゃるでしょう。
その中には、日本で家族を持ち、あるいや大勢の友人を得て、仕事や収入と言った生活の基盤をしっかり日本で築いている。人生の土台が日本にある、とも言うべき状況になった方たちも多いのではないでしょうか。
ただ、外国人として日本に滞在する限り、「在留資格」と「在留期間」という、日本にいるための法的な裏付けを常に満たしておくために、煩雑な手続きから逃れることはできません。
また、どちらも国に「許可」を求めるものですから、その性質上、『万が一にも「不許可」になったら…』という不安を100%消し去ることはできないでしょう。不許可になると、生活の土台そのものを失くしてしまう訳ですから、その不安は小さなものではないですね。
では、どうすれば良いのでしょうか?
「面倒な手続きや、不安から解消されたい」
「堂々と日本で、これからも長く暮らしていきたい」と考える外国人の方が選ぶ手段として、「帰化」と「永住」の二つの選択肢があります。
どちらも「ずっと日本にいられる」という点では同じですが、実はその中身には大きな違いがあるのです。ここでは、その違いについて解説していきます。
帰化と永住の一番の違い
- 「帰化」とは
-
「日本国籍を取得すること」です。つまり「日本人になる」ということです。
日本は二重国籍を認めていませんので、帰化すると元々持っていた国籍は失うことになります。
日本人になるのですから当然、日本にいることに許可は必要ありませんし、期間を区切られることもありません。
- 「永住」とは
-
「外国人のまま」「ずっと日本に住み続けられる在留資格」を得ることです。つまりは外国人だけれど日本に無期限にいられるということです。国籍はそれまで持っていたものと変わりません。
ほとんどの在留資格は最長5年の在留期間と決まっているので、その制限がなくなり、いつまででも日本にいることができる、というのは大きなメリットですね。
二つの違いを比較
分かりやすく表にまとめてみました。
帰化 | 永住 | |
手続きを行う場所 | 法務局 | 出入国在留管理庁 |
手続きの内容 | 帰化許可申請 | 永住許可申請 |
国籍 | 日本国籍 | 出身国のまま |
許可のための居住要件 | 引き続き5年以上 | 引き続き10年以上 |
パスポート | 日本 | 出身国 |
在留期間更新 | なし | なし |
在留カード | なし | あり(有効期間7年) |
身分の取消 | なし | あり |
日本の戸籍 | あり | なし |
比べて見るといろいろ細かな違いがあります。
しかし、やはり一番大きな違いは「国籍」が変わることでしょう。
出身国への帰国
ずっと日本で暮らしていくとは言っても、出身国に親族や友人知人がいて、訪ねていくこともあるでしょう。そんな時はどうでしょうか。
帰化をすると、自分の出身国へ行く際に、日本のパスポートを持ち、さらに国によってはビザを申請して行かなければならないこともあり得ます。
また出身国と言えども、やはり現地では外国人として、現地の入国管理局等に滞在期間を制限されることになります。
その点、永住だと国籍が変わらないので、出身国へ戻るのに障害はありません。現地に滞在する期間も自由です。(ただし日本へ戻ってくるためには、再入国手続きが必要にはなります)
帰化のメリット・デメリット
日本人として選挙権が得られ、公務員になることもできます。
出入国在留管理庁(いわゆる入管)に関わることはなくなり、在留カードを持ち歩く必要もありません。日本の戸籍が作られ、日本国民としての公的な証明を戸籍で行うことができます。
反面、出身国の国籍ではなくなることで、アイデンティティをも喪失したような寂しさを感じることがあるかも知れません。故郷へ帰る時にも外国人として一定の制約を受けることになります。
永住のメリット・デメリット
数年ごとの在留期間の更新手続きから解放されます。もしかしたら不許可になるのではないか、という不安が解消されるのです。これが永住の一番大きなメリットかも知れません。
国籍が変わらないので、出身国との関係も変わりません。
しかし外国人のままなので、納税しても選挙権はなく、公務員にはなれません。
そして入管法に定められた住所地の届出を怠ったり嘘の住所地を届け出る、犯罪を侵したり納税の義務を果たさない…などすると、永住許可が取り消されてしまう場合もあります。
どちらを選ぶか?
結局のところ「帰化」と「永住」のどちらが良いのか?ということは、その人によります。
「日本国籍になっても良い」かどうか、が判断の決め手になるとは思います。
国籍が変わってしまうことよりも、日本人になることでの仕事や生活上の利便性の方が大きいのであれば、「帰化」する方がその後日本では暮らしやすいでしょう。
逆にどんなに日本に住み続けたくとも、国籍は変えたくないのであれば、「永住」しかありません。
帰化と永住には、解説には出てこなかった、許可を受けるための条件に、もっとたくさんの違いがあります。大まかに言ってしまうと、帰化よりも、永住の方が、許可を得るのが難しいところがあります。
それが理由で帰化を選ぶ方もいるようですが、自分の国籍という大切なものを失うか残すか、後悔のないように、よく考えたうえで決めてほしいと思います。
判断に迷う場合や、許可の条件や手続きについて詳しく知りたい方は、お近くの行政書士を頼ってみてください。
弊事務所では、帰化許可申請、永住許可申請についてのご相談をお受けしております!
お問い合わせはお気軽にどうぞ。
行政書士わかぞの事務所