株式会社の資本金とは
会社を運営するうえで元手となる資金のことです。
出資者から募った資金や、発起人の自己資金が資本となります。
以前は株式会社を設立するのに、資本金が最低1,000万円以上、有限会社は最低300万円以上が必要でしたが、平成17年の会社法改正により、株式会社も合同会社も資本金1円以上で設立が可能となりました。
資本金は手つかずで置いておく…?
会社設立のときに資本金の額を登記し、実際に出資しました。ではそのまま置いておかなくてはならないのでしょうか?「登記もしたんだし、これは会社の財産として、手を付けちゃまずいんじゃないか?」
いえ、資本金は設立の際にきちんと出資した、という証明(※)さえできれば、その直後に引き出して運転資金にあてたり、当面必要な支払いを行ったりしても良いのです。
※この「出資したという証明」とは、代表者の口座に振り込んだ記録、つまり銀行等の預金通帳のコピーです。
ただし自由に使えるとは言っても、個人のお金ではなく会社の資産です。
代表一人の会社であっても、個人事業主のような感覚で個人的な支払いに使うことは避けましょう。
会社は1円でも作れます!…が?
資本金が十分にあるというのは、借入金や利子の支払い能力がある、人を雇ったり設備投資に使える資金がある、倒産リスクへの備えがある…つまり、資金面での余裕があるということですから、顧客や取引先からの信用度は増し、金融機関からの評価も高くなると思われます。
また、資本金がたとえ1円でも会社を作ることは出来るようになりましたが、その後事業を軌道に乗せ、いち早く安定した運営をしていくためには、開業直後の一番苦しい時期を乗り越えられる体力=資本金を準備した方が良いと言えます。
資本金は返済義務のない純資産、開業直後の不安定な経営状態を下支えする貴重な資金源となってくれるのです。
こんな時はコレくらい……
⑴「初期投資」と「当面の運転資金」を目安にする
当面の運転資金とは、大体開業後6ヶ月くらいは売上が上がらなくても運転資金が不足することがない金額と言われています。
始めのうちはやはり売上が立たず、利益が入るより経費が出ていくばかりの時期が続きます。
そこですぐに資金繰りが悪化してしまうと借入金に頼らざるを得なくなりますが、その融資にも銀行等の審査があり、あまりに資本金が少ないと審査に通らず、危ないお金を借りる羽目に…ということになり兼ねません。
⑵税金の優遇制度を参考にする
(消費税)
資本金1,000万円未満→設立から原則2期は消費税が免除される
資本金1,000万円以上→設立1期目から消費税課税事業者となる
資本金1億円以上→中小企業の優遇税制は使えない
(法人住民税)
資本金1,000万円以下で従業員50人以下→年額7万円
資本金1,000万円超~1億円以下→年額18万円
資本金1億円以上→数十万~数百万円に増える
⑶許認可の要件を考慮する
許認可を受けて行う事業の場合、決められた要件を満たす必要があります。人的要件、物的要件、財産的要件とありますが、許認可の種類によっては資本金が一定額以上でなければならないとされています。
やろうとしている事業と、それに必要な許認可、それを得るための財産的要件は前もって調べておきましょう。
例えば…
建設業許可→500万円以上
第1種貨物利用運送事業→300万円以上
労働者派遣業→2,000万円以上
⑷融資が受けられるかどうかを参考にする
一般的に「資本金=事業への自己投資額」と見られ、金融機関での信用力に直結していると言えるでしょう。会社の登記簿にも載るので、取引先や金融機関が最初に見るポイントでもあります。
日本政策金融公庫などの融資審査では数百万円はあった方が安心でしょう。
また銀行など金融機関からも、資本金が100万円以下だと「零細」と見られやすく、500万円~1,000万円あれば「ちゃんと準備した会社」だと思われやすいです。
実際的な資本金の目安とは…
100万円~300万円程度 | 副業レベル、個人事業からの法人成り |
300万円~500万円程度 | 小さな会社の一般的なスタートライン |
500万円~1,000万円程度 | 取引先や銀行の信用を考慮した設立 |
優遇税制や補助金(中小企業対象がほとんど)などを考えると、必ずしも資本金は多ければ良い訳ではなさそうです。
運転資金や信用力を考慮して、1,000万円未満で税務メリットを残しつつ、なるべく多めに…でしょうか。
現在は1千万円以下の資本金で設立される会社も増えてきました。
個人事業主の法人成り、少人数での新たな起業へのハードルは確実に下がっています。
ですが、1円でも!と安易に会社を作るのではなく(そんな人はあまりいないと思いますが…)後々の運営をよく考えて、中小企業では最低300万円程度は準備しておくことが望ましいと言えます。
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