おひとりさまの老後の手続き、誰に頼む!?~成年後見制度の活用場面④

おひとりさまの老後に対する備え

事務所概要

行政書士わかぞの事務所
代表者 若園しのぶ
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TEL 047-701-8705
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営業時間 9:00~18:00
休業日 土日祝・年末年始
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いまは元気で、自分のことは自分でできている。
けれども、この先、入院したら、判断することが難しくなったら、そのとき手続きをしてくれるのは誰だろう。
ふと、そう考えたことはありませんか。

このシリーズでは、これまで、判断能力が落ちたご家族のために制度を使う場面を取り上げてきました。
今回は、ご自身に向けた話です。
身寄りがない方、お子さんのいないご夫婦、親族はいても頼みにくい事情のある方に、3つの場面を通して、ご自分に当てはめながら読んでいただければと思います。

この記事を読むと分かること
・頼む人が決まっていないと、何が起きるのか
・「頼める人がいない」と感じる3つの場面
・元気なうちに「頼む人」を決めておける、任意後見という制度
・誰に頼むか、どう頼むかの考え方
・頼む相手に、まず伝えておきたいこと

まつ子さん

主人とふたり、まだ元気なつもりだけれど……。
どちらかがひとりになったらと考えると、少し心細いわね。

目次

1.頼む人が決まっていないと、何が起きるのか

判断することが難しくなると、預金の解約や施設の契約などを、自分で進めることができなくなります。
このシリーズの①〜③で見てきたとおり、家族であっても代わりに手続きをすることはできません。

そのときに使われるのが法定後見です。
ただし、法定後見では、誰を後見人にするかは家庭裁判所が決めます。
申立てをする親族がいなければ、市区町村長が申立てをすることもあります。
いずれにしても、自分の知らない人が後見人になる可能性があります

また、後見人の役目は、原則として本人が亡くなった時点で終わります。
亡くなったあとの葬儀や納骨、住まいの片付けを誰が引き受けるのかは、別に考えておく必要があります。
頼む人を自分で決めておけるのは、判断能力があるうちだけです。

2.「頼める人がいない」3つの場面

01.ずっとひとりで暮らしてきたAさん

Aさんは70代。結婚はせず、両親を見送ってから、ずっとひとりで暮らしてきました。
体は丈夫なほうで、これまで人に頼らずにやってきました。

ある冬、Aさんは転んで足を骨折し、しばらく入院することになりました。
病室のベッドで考えます。家賃や公共料金の支払いはどうなっているだろう。
退院しても、前のように暮らせなかったら、施設を探して契約するのは誰だろう。
そして、もし自分が亡くなったら、部屋の片付けは誰がしてくれるのだろう。

➡ 頼める人が決まっていなければ、手続きはそこで止まってしまいます。
元気なうちは気にならなかったことが、急に目の前の問題になります。

02.認知症の夫を支えるBさん

Bさんご夫婦には、子どもがいません。
数年前に夫が認知症と診断され、Bさんは家庭裁判所から夫の後見人に選ばれました。
夫の預金を管理し、介護サービスや施設の契約を進め、毎年、家庭裁判所に報告をしてきました。

夫が施設で穏やかに暮らすようになったある日、Bさんはふと思います。
夫のことは私がしてきた。
でも、私自身が同じようになったら、誰がしてくれるのだろう。
私が先に倒れたら、夫の後見は誰が引き継ぐのだろう。

➡ 夫を支えてきたBさんには、同じように支えてくれる人がいません。
お子さんのいないご夫婦は、いずれどちらかがおひとりさまになります。

助手にゃん子

『自分のとき』の心細さに気づかれたとき。
その気づきは、ご自分の備えを始めるよいきっかけになります。

03.かわいがっている甥や姪がいるCさん

Cさんには、小さいころからかわいがってきた甥と姪がいます。
ふたりとも、Cさんのことを気にかけてくれます。

けれども、甥は仕事の都合で遠方に住んでいます。
姪は義理のご両親の世話で忙しく、自分の家庭のことで手いっぱいの様子です。
頼めば、きっと引き受けてくれるでしょう。
だからこそ、負担をかけたくないと思うのです。

➡ 頼みたい相手がいても、相手の事情を思うと言い出せない。
親族がいても、頼んでいなければ、いざというときに動ける人はいません。

04.あなたはどの場面に近いですか

ご自分に当てはめて、考えてみてください。

入院することになったとき、すぐに来てくれる人の顔が思い浮かびますか。
通帳や大切な書類のある場所を、誰か知っていますか。
判断することが難しくなったら、どこで、どう暮らしたいか、誰かに話したことはありますか。
亡くなったあと、連絡してほしい人を誰かに伝えていますか。

ひとつでも「いいえ」があれば、この先を読んでいただく意味があると思います。

3.元気なうちに「頼む人」を決めておける、任意後見

01.任意後見とは

Aさん、Bさん、Cさんのような方に知っていただきたいのが、任意後見という制度です。

任意後見は、判断能力があるうちに、「この人に、こういうことを頼みたい」と自分で決めて、契約しておく制度です。契約は公正証書で結びます。

その後、判断することが難しくなったときに家庭裁判所へ申立てをすると任意後見が始まり、自分で選んだ人が、契約で決めた範囲の手続きを代わりに進めてくれます。

1章でお伝えした法定後見との大きな違いは、誰に頼むか、何を頼むかを、自分で決めておけることです。
仕組みや手続きの流れ、2026年の法改正で変わる点は、別の記事で詳しくまとめています。

02.Aさん、Bさん、Cさんの場合

Aさんの場合

元気なうちに、信頼できる人と任意後見契約を結んでおけば、判断が難しくなったとき、その人が施設探しや入所の契約、お金の管理を引き受けてくれます。
入院のように、判断はできるけれど体が動かない場面に備えて、お金の管理や支払いを任せる「財産管理の委任契約」をあわせて結んでおくこともできます。

Bさんの場合

Bさんは、夫のために後見人として手続きを担ってきました。
今度は、Bさん自身が任意後見契約を結び、自分のときに頼む人を決めておくことができます。

なお、Bさんが夫の後見人を続けられなくなったときは、家庭裁判所があらためて夫の後見人を選びます。
夫のことは制度が引き継ぎ、Bさん自身のことは、Bさんが自分で決めておく。
そう分けて考えると、不安の形がはっきりしてきます。

Cさんの場合

甥や姪に、全部を任せる必要はありません。
任意後見では、頼む内容を自分で決められます。
暮らしに関わることだけを甥や姪に頼み、お金の管理は専門職に頼む、といった分け方もできます(4章で詳しくお伝えします)。

03.あわせて考えておきたいこと

任意後見は、判断することが難しくなってから、本人が亡くなるまでの間を支える制度です。
その前後のことは、別の備えを組み合わせます。

ひとりで暮らしていると、判断能力が落ちてきたことに気づいてくれる人がいないため、頼む相手と定期的に連絡を取り合う「見守り契約」を結んでおく方法があります。

亡くなったあとの葬儀や納骨、住まいの片付け、病院や施設の精算などは、「死後事務委任契約」で頼んでおきます。

残った財産を誰に引き継ぐかは、「遺言書」で決めておきます。

4.誰に頼むか

01.甥や姪、きょうだいに頼む

気心が知れていて、自分のこれまでの暮らしや好みを分かってくれている。
親族に頼むいちばんの良さは、そこにあります。

一方で、Cさんの場面のように、住まいが遠い、自分の家庭のことで忙しい、といった事情を抱えていることもあります。
頼む前に、相手の暮らしの事情もよく聞いておきたいところです。
きょうだいの場合は、自分と年齢が近い場合が多いことも考えておく必要があります。

02.専門職に頼む

親族に頼める人がいない場合や、親族に負担をかけたくない場合は、専門職に頼む方法があります。
仕事として引き受けるため、長い期間にわたって続けてもらいやすいのが良さです。

その分、報酬がかかります。
どんな事務を頼み、いくらかかるのかを、契約の前によく確認しておきましょう。

03.複数の人に、役割を分けて頼む

任意後見人は、ひとりに限られません。
複数の人に頼むことができ、それぞれに頼む内容を分けることもできます。

たとえば、甥や姪には、住まいや施設、介護サービスの契約など、暮らしに関わる手続きを頼む。
お金の管理は専門職に頼む。
そうすれば、甥や姪には、自分のことをよく分かっている立場で関わってもらいながら、日々の負担は軽くすることができます。

Cさんのように、「全部を任せるのは申し訳ないけれど、少しなら頼みたい」という方には、考えてみていただきたい形です。

やな美さん

信頼してる甥っ子の負担を減らせるなら、お願いしたいわ

04.注意:同世代の友人・知人に頼むのは避けたい

長年の友人に頼みたい、と考える方もいらっしゃいます。
けれども、同世代の友人や知人に頼むのは、避けたほうがよいと考えます。

自分と同じように年を重ねるため、いざ任意後見が必要になったときに、相手も体調を崩していたり、判断することが難しくなっていたりするおそれがあります。
相手が先に亡くなることもあります。
気持ちのうえで頼りになる友人と、手続きを任せる相手は、分けて考えていただくのが安心です。

05.頼む相手に、まず伝えておきたいこと

頼む相手が決まったら、いちばんに伝えておきたいのは、「これからどう暮らしていきたいか」「何を大切にしたいか」です。

・できるだけ住み慣れた家で暮らしたい。
・施設に入るなら、日当たりのよい部屋がいい。
・趣味の集まりには、できるだけ通い続けたい。
そうした望みを、言葉にして、もしくはエンディングノートなどに記すことで前もって伝えておきます。

任意後見人は、本人の意思を尊重し、心身の状態や暮らしの状況に配慮して仕事をすることが、法律で定められています。
伝えておいた望みは、判断が難しくなったあと、任意後見人が「この人ならどうしたいか」を考える手がかりになります。

そのうえで、お金の使い方の考え方や、亡くなったあとの希望(葬儀の形、納骨先、連絡してほしい人)も、あわせて伝えておくと安心です。

任意後見は、亡くなったあとのための準備ではありません。
自分で判断することが難しくなっても、自分らしく暮らし続けるための備えです。

助手にゃん子

何を頼むか?より、自分はどうしたいか?を考えてみて下さい。

5.まとめ

・判断することが難しくなると、家族であっても代わりに手続きはできない。

・頼む人が決まっていなければ、家庭裁判所が後見人を選ぶ。

・身寄りがない方、お子さんのいないご夫婦、頼みたい親族に事情がある方は、早めに考えておきたい。

・任意後見なら、誰に、何を頼むかを、元気なうちに自分で決めておける。
見守り契約や死後事務委任契約、遺言書と組み合わせると安心。

・頼む相手は、親族、専門職、あるいは役割を分けて複数に。同世代の友人・知人は避けたい。

・頼む相手には、まず「どう暮らしたいか」「何を大切にしたいか」を伝えておく。

頼む人を自分で決めておけるのは、判断能力があるうちだけです。
誰に頼むかをすぐに決められなくても、まずは自分がどう暮らしていきたいかを書き出してみるところから、始めてみてはいかがでしょうか。

次回は、相続の場面で、相続人のなかに判断能力が落ちた方がいる場合の遺産分割を取り上げます。

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<出典>
任意後見契約に関する法律第2条(定義)、第3条(任意後見契約の方式)、第4条(任意後見監督人の選任)、第6条(本人の意思の尊重等)/民法第653条(委任の終了事由)/老人福祉法第32条(審判の請求)

<免責事項>
本記事は、執筆時点の法令にもとづく一般的な情報提供を目的としています。個別の事情によって結論が異なる場合がありますので、具体的なお手続きについては専門家にご相談ください。

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