「廃棄物の処理」=「ごみを捨てる」だけのことではありません。
大量生産大量消費の時代にはどれだけ安く作るかが大事であり、コスト重視、効率優先、廃棄物の処理にお金をかけるなんて無駄なことだといわんばかりに、不法投棄を繰り返したり、周辺環境を考えずに不適正保管(=放置)をしていたりするケースが相次ぎ、各地で問題が起きていました。
現在は、環境への意識の高まり、資源の有効活用、持続可能な社会へと日本全体が舵を切っています。そんな中において、生産・消費の過程で必ず発生する産業廃棄物をきちんと処理することは、排出事業者に最低限求められる責任とされています。
しかし、自社で処理が行えない場合は、許可を持つ処理業者と契約を交わし、処理の委託をすることになります。
産業廃棄物処理業の許可とは
廃棄物処理法によって定められた目的を達成するために、産業廃棄物処理業は都道府県、または政令市による許可制となっています。
法令により求められる基準を満たし、許可を得た事業者のみが、産業廃棄物処理業者として事業を行うことができます。
廃棄物処理法第1条 (目的)
この法律は、廃棄物の排出を抑制し、及び廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とする。
産業廃棄物処理業許可の種類
1.産業廃棄物収集運搬業許可
法定20種類の産業廃棄物を収集し、処分場までの運搬を行うための許可
2.産業廃棄物処分業許可
法定20種類の産業廃棄物に処理を加えて無害化、減量化する中間処分と、最終的に埋立などで処理する最終処分を行うための許可
3.特別管理産業廃棄物収集運搬業許可
特に人の健康や環境へ悪影響を及ぼす恐れがあるとして、政令で定められた特別管理産業廃棄物を収集し、処分場までの運搬を行うための許可
4.特別管理産業廃棄物処分業許可
特に人の健康や環境へ悪影響を及ぼす恐れがあるとして、政令で定められた特別管理産業廃棄物の中間処理、最終処分を行うための許可
ご自分が行う(行おうとする)事業にはどの区分の許可が必要か、ということは取り扱う廃棄物の種類や、処理のどの工程を担うのか、によって変わります。
許可取得に必要な要件
1.人的要件
法人の代表もしくは管理者、事業主本人が、公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センターの処理業講習会を受講し、テストに合格して終了証を取得すること。
2.経理的基礎要件
事業を継続して的確に行うだけの経理的基礎があること。自己資本比率や決算状況などにより審査されます。
3.施設要件
廃棄物処理を行うのに適した処理施設、設備(車両、容器等)を備えていること。かつ適正に維持管理できること。
許可を取得するのに最も重要かつ厳しい基準があるのが、この施設要件です。
4.欠格要件
法人の社員、事業主が以下の欠格条項に該当する場合は、許可を取得できません。
a.成年被後見人もしくは被保佐人、破産して復権していない人
b.過去に廃棄物処理法に違反し、行政処分を受けた人
c.暴力団の構成員や関係者だった人
d.禁錮以上の刑を受けてから5年経過していない人
e.その他
許可申請の流れ
1.事前調査
必要な許可に求められる基準や要件を確認します。
特に講習会の受講は予約が必要ですが、すぐに定員が埋まります。前もって受けておくようにしましょう。
2.申請に必要な書類の作成、準備
a.申請書一式
b.事業計画書
c.講習会の終了証
d.財務諸表や納税証明書など経理的基礎を証明する書類
e.処理施設、設備の写真や使用承諾書、車両の車検証など施設要件を証明する書類
f.法人、事業主の登記簿謄本や住民票など
3.都道府県、政令市の担当部署へ申請
申請には事前に予約が必要です。その日までに書類等に不備がないか、要件に不足はないかなど、よく相談して準備しておくことが重要です。
最初の申請でもれなく書類を整えておくことが、スムーズな許可取得への近道です。
4.申請の審査
おおよそ申請から許可までにかかる標準日数は60日とされています。(行政庁閉庁日を除く)
ただし不備の補正や、追加資料の提出を求められた場合にかかる日数はこれには含まれていません。実際には数か月かかると見ておくのが良いでしょう。
5.許可証の交付
審査が終了し、無事に許可を取得することができれば、許可証の交付を受けます。
産業廃棄物処理業の開始です。
5.許可取得後の注意点
許可は更新が必要
許可の有効期間は5年間となっています。
更新申請の受付は、自治体によって異なりますが大体期間満了日の2~3か月前から行うので、余裕をもって準備し、許可が途切れないように更新申請を行いましょう。
各種変更の届出も忘れずに
許可証の記載内容が変わった時は、許可証の書換えが必要なので“変更許可申請”が必要です。
また役員の変更、運搬車両の変更など許可証の書換えまでは必要ない場合も、“変更の届出”が必要です。
講習会の再受講
更新申請に先立って、廃棄物処理業講習会の受講も必要です。
注意したいのが、受講終了証の有効期限は受講から2年間であることです。
更新申請に先立って受講したものの、それが2年以上前である場合は再受講が必要です。
ポイント
許可の更新手続きは、一度受けた許可証を新しいものに差し替えるだけの簡単なものではありません。
新規の許可取得と同様の要件、書類準備が求められます。
ですので、許可の要件を不足なく満たしている状態を維持するよう努めましょう。
まとめ
産業廃棄物処理業の許可申請は、求められる要件が多岐に渡り、それを証明するための添付書類も多数必要で、かつ準備には相当の時間と手間がかかるものです。
本業で忙しい処理業者の皆さまにとっては、申請手続きの事務作業に手を煩わせることなく、安心して許可を取得し、適正に法令を遵守した形で事業の運営をしていくことが一番重要だと考えます。
そこで許可申請の際は、行政書士へご相談してみるのはいかがでしょうか。
行政書士は、許認可手続きの専門家です。
関係部署への事前相談、書類収集及び作成、提出代行、許可取得後のアフターフォローまで一貫してお手伝いすることができます。
産業廃棄物処理業に関する許可を取りたい、許可は持っているけれどいろいろ変更したことがある、次の更新が近づいてきた…そんな時は、ぜひお近くの行政書士にお問い合わせください。
お問い合わせ、ご相談はお気軽にどうぞ。
行政書士わかぞの事務所