【高齢者にとってのペットという存在の価値】
外出の機会や、社会、他人とのリアルな触れ合いが減ってしまいがちな高齢者にとって、ペットが与えてくれる癒しやぬくもりはかけがえのない財産だと思います。
犬がいるから散歩に出る、猫のワクチン接種があるから病院に行く、エサを買いにお店へ行く…などペットのお陰で外の世界との関わりが生まれることもたくさんあります。
何より家族として一緒に暮らしているペットの存在そのものが、生きる支えとなりますよね。
【ペットも長生きする時代】
ただ、ペットも長生きをする時代です。もしかしたら自分の方が先に亡くなってしまう、病気や認知症などでペットの面倒を見られなくなる…そんなことが起こる可能性も否定できません。
自分の代わりにペットを託せる家族や友人知人がいる方は良いですが、疎遠になっていて頼めない、友人にも負担をかけすぎてしまいそうでお願いするのをためらう…こんな場合はどうしたら良いのでしょうか。
もしも、ペットの行く末に不安を感じている方がいらっしゃるなら、できる対策をできるうちに行いましょう。
前置きが長くなりましたが、ここでは、自分に何かあってもペットが困らないように、3つの方法をご紹介します。
1つは遺言による対策方法。
あとの2つは契約による対策方法です。
1.遺言による方法~負担付遺贈~
まず1つめは、遺言によって「ペットの面倒を見る代わりに○○に財産を譲る」と指定する方法です。「負担付遺贈」と呼ばれます。
これは普段疎遠になっているとしても、一人でも相続人がいる方に有効な方法です。
ペットを相手として財産を残す事は出来ないのですが、誰かにペットの面倒を見てもらう代わりに、これだけの財産を残します、と間接的にペットのために財産を残す事はできるのです。
この負担付遺贈があなたの希望通りに実現するためには、2つ注意しておく点があります。
1点目は、財産を遺贈する相手の意思確認をきちんとしておくことです。相手にとっても、いきなり財産と引き換えにペットをお願いされても困ってしまいますね。実際には大切なペットを託すのですから、事前に相談もなく遺贈する、ということは考えられませんが、いったん話をして承諾を得ていたとしても、いざ相続が開始されたときに気が変わっていたとしたら。
遺言は相手に対する一方的な意思表示なので、受贈者はこれを拒否する(放棄する)ことができます。ですのでたびたび、折に触れ、相手に意思確認をしておくことが必要かもしれません。同時に家族にも事前に伝えておきましょう。
もう1点は、遺贈する財産の額によっては、他の相続人の権利(遺留分と言います)を奪ってしまうことになりかねないので、その権利の分を巡って争いになってしまうことがある、ということです。
これについては、初めから他の相続人の権利に配慮した遺贈を指定することで避けることができますので、必要に応じて専門家のアドバイスを求められると良いでしょう。
いずれにしろ、あなたの希望通り、ペットのために財産を譲り、それを使ってペットが安心して暮らせるように、との遺言内容がスムーズに実現するためには、実際に手続きを行う遺言執行者を遺言の中で決めておくことが重要です。
そしてできれば「公正証書遺言」という形で残しておきましょう。
2.契約による方法~負担付死因贈与契約~
2つめは負担付遺贈と名前は似ていますが、遺言ではなく契約による方法です。
「負担付死因贈与契約」と呼ばれ、内容としてはやはり「自分の死後、ペットの世話をする代わりに財産を譲る」というものです。
一方的な意思表示である遺言と違って、相手との合意に基づいて交わす契約なので、いざその時になって「ペットの世話もできないし財産も受け取らない」と拒否することは原則的にできません。
この負担付死因贈与契約による場合でも、相手との合意に基づくとはいえ、折に触れ相手に意思の確認をしておくのが良いでしょう。大切なペットを託す相手です。どんな風に世話をしてもらいたいか、自分の想いを含めてよく伝えておきましょう。
そして契約書を作成したら、こちらも「公正証書」としておくことが望ましいです。
ここまでご紹介したふたつの方法は、死後に効力を生ずるという点で共通点があります。
3.契約による方法~ペット信託~
3つめも契約になりますが、「第三者(受託者)に財産を託し、その人に財産を管理してもらいながら、ペットの世話をお願いする人(受益者)に飼育費用として財産を渡していく」方法です。
「信託契約」というもので、信頼できる誰かに自分の財産を託し、一定の目的のために管理、使用してもらう契約です。
利点としては、信託法により契約の実現が保証される点、信託監督人を立てることで信託財産の管理がきちんと行われているかどうかチェックできる点です。
契約の効力発生は死後とは限らず、自分が病気でもうペットの面倒が見られなくなったら開始する、というようにすることもできます。
また、ペットのための財産をあらかじめ信託しておくことで、気が付いたら財産が目減りしていてペットの飼育費用が足りなくなった、という状況にならずに済みます。
なお、信託財産を受ける権利というのは、相続財産には含まれないとされていますが、はっきりとした判例が裁判所から下されたわけではないので、できれば「遺留分」には配慮しておいた方が良いでしょう。
4.まとめ
いかがでしたか?
どの方法にもメリットとデメリットがありますので、もっと詳しく知りたい、相談してみたい、という方は、ぜひお近くの行政書士を頼ってみてください。
あなたに一番適した方法についてアドバイスを行うのはもちろん、遺言書、契約書の作成から公証手続、遺言執行人または信託監督人として遺言、契約の実現までサポートすることができます。
可愛いペットが困らないよう、できる対策はできるうちに行いましょう。
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行政書士わかぞの事務所