スマホの中の“あなたの財産”──エンディングノートで考えるデジタル遺産
エンディングノートを書いていると、「お金」「家」「保険」など、目に見える財産を中心に整理することが多いですよね。
でも、いまの時代に忘れてはいけないのが、スマホやパソコンの中にある「デジタル遺産」です。
今回は、少し前までは考えられなかったような「見えない財産」について、お伝えしたいと思います。
１．デジタル遺産ってなに？
デジタル遺産とは…
「インターネット上やデジタル機器の中にある、あなたの“情報や資産”のこと」です。
※「デジタル遺産」は法律上明確に定義された言葉ではありませんが、実務ではこうした情報を指すことが多くなっています。
たとえばこんなものがあります：
・ネット銀行やネット証券の口座
・各種ポイント、電子マネー、マイレージなど
・SNS（X、Instagram、Facebookなど）のアカウント
・サブスクリプションの契約（Netflix、Amazon、Spotifyなど）
・クラウド上に保存した写真、文書、データなど
・ネットショップの会員情報、購入及び販売履歴など…
何でもスマホやパソコンから簡単に手続きできるようになりました。
そして、日々、SNSなどに親しんでやり取りをされたり、スマホで撮った写真をパソコンで管理していたり、買い物は全てネットから…という方もいらっしゃるでしょう。
膨大な量の情報が、目には見えないところに存在しているのです。
これらはすべて「デジタル遺産」と呼んでもよいものに含まれます。
２．家族が困る２大トラブル
デジタル遺産でよくあるトラブルは次の2つです。
⑴どこに何があるのか分からない
ネット銀行や電子マネーは、通帳も書類もないことが多く、「存在自体に家族が気づかないまま」埋もれてしまうことがあります。
⑵パスワードが分からず手続きできない
スマホやパソコンがロックされたまま、中の写真や契約データにアクセスできないというご相談も増えています。
こうした情報は、目に見えず形がない分、「本人しか知らないまま」になりやすいのが難しいところです。
定期購入などは解約手続きをしないと、いつまでも料金が引き落とされ続けます。
銀行の口座を解約したから大丈夫、ということではなく、引落し不能の債務が発生し続けるという困った状況になり兼ねません。
ポイントやマイレージなどは、会社にもよりますが、相続として引き継げるものもありますので、きちんと手続きさえすれば、ご家族にとってもプラスになりますね。
３．ノートに書いておくと安心な項目
ではどうしたら良いのでしょうか？
ここでエンディングノートの出番です！
すべてを細かく書く必要はありません。
ただ、家族が「存在を知っている」だけで、ずいぶん違うのです。
そこでエンディングノートには、次のような情報を残しておくと安心です。
・利用している主なネットサービスの名前
・登録メールアドレス
・ID（ユーザー名）
・家族にどうしてほしいか（削除・引き継ぎなど）
・パスワードは別紙に書いて保管（保管場所を家族に伝えるか、信頼できる人に預けておく）
たとえば…
「写真はGoogleフォトに保存しているので、残しておいてほしい」
「X（旧Twitter）は削除してかまいません」
「ネット銀行は○○銀行アプリに残高があります」
こうして書いておくだけで、家族が探す手がかりになります。
多くのサービスを利用している場合は、一度に書くのは大変かもしれません。
思い出すたびにエンディングノートに書いていくようにすると良いと思います。
それでも、IDや登録メールアドレスは何だったっけ？と思い出すのは苦労しますよね。
サービスを利用したついでに書いておくとか、あまり使用していないものはこの際、会員登録を削除してしまうとか、少しずつまとめて整理したり、記録に残していきましょう。
４．ロック解除は伝える方法を考えてみる
スマホやパソコンのロック解除は、専門の業者に頼むとしても、高額な費用がかかりますし、１００％解除できるという保証もありません。
デジタル遺産の情報をすべてノートに記録できなかったとしても、ご家族がスマホやパソコンの中身を確認できるだけで、その存在が知れたり、必要な手続きに行き着けたりします。
ぜひ、解除の方法については何らかの手段でご家族に伝わるようにしておきましょう。
指紋認証での解除を使用されている方は、登録する指紋のひとつをご家族のものにしておく。
パターンや番号での解除を使用されている方は、小さなカードに書いて、その上から修正テープを貼っておき、それを１０円玉でこすり取ると見られるようにしておく。
あるいは、差し支えがなければノートに書いておいても良いですね。
ポイントは、誰かがあとで困らないようにしておくこと。
デジタル時代の思いやり、とでも言えるでしょうか？
５．見えない財産こそ、エンディングノートに
スマホやパソコンの中にも、あなたの暮らしの記録が詰まっています。
それは、家族にとっても大切な思い出であり、時には経済的な財産でもあります。
だからこそ、「デジタルのことは何も書かないまま」にならないように、エンディングノートに一言でもメモを残しておく。
それだけで、いざというときに家族が困らず、あなたの思いをきちんと引き継ぐことができます。
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