エンディングノートの重要な役割のひとつ、財産について書いていきましょう。
これまで、エンディングノートを書くにあたって、「医療や介護」「家族関係」「家系図作り」などを見てきました。
ここまで書けた方は、もうかなりしっかりと自分の整理が進んでいると思います。
そしていよいよ、ここからは「財産」のことに目を向けていきましょう。
財産を誰にどう渡すか、を書くのは遺言書ですが、財産の全体像を整理するにはエンディングノートが最適です。
今回は、行政書士の視点で「遺言書に直結する財産整理」の方法を解説いたします。
1.エンディングノートに財産のことを書く必要性
財産について記し、どうやって分けたら良いか、受け継いでほしいか、ということは、エンディングノートにではなく、遺言書に書かなければ意味がありません。
それなのに、なぜエンディングノートにも財産について書く必要があるのか?ということです。
正直なところ、いちいちリストにして書くのは面倒だと思われる方も多いでしょう。
こう考えていただければ分かりやすいと思います。
エンディングノートは下書き、遺言書は清書。
いきなり清書から始めるのは無理がありますよね。
そのために、エンディングノートでまずはもれなく「財産の内容」をリスト化するのです。
そしてエンディングノートと遺言書は全く性質の違うものです。
ここでのポイント
エンディングノートでは「○○を誰に渡す」とか「△△は誰に譲る」など、遺言書と抵触するような記載は避ける。
財産の分配ではなく、あくまで「事実の整理」と「まず伝えておくべき情報」を書くにとどめる。
2.金融資産をリスト化しよう
⑴預貯金について
まずは書きやすい預貯金から書いていきます。
ほとんどの方はどこかしらの銀行や信用金庫等の金融機関に口座をお持ちだと思います。
相続のときにはすべての口座の解約、名義変更、残高引き出し等手続きが必要になりますので、あなたが持っている預貯金口座をもれなくリストに出来るようにします。
書くことは…
・金融機関名(現在の名称)
・支店名(統廃合された場合に注意)
・普通・定期・当座等の種別
・支店及び口座番号
以上です。遺言書に書くときは正確な記載が必要になるので、出来ればここでも最新の、正確な情報で書くようにしましょう。
口座の残高は書く必要はありません。
日々、変わるものですし、そのたびに書き直すのは無理があります。
⑵株式や投資信託について
証券会社や信託銀行との取引についても、同じようにすべてリストにしていきます。
すぐに思い出せなくても、若い頃に購入したままずっと保有している株があったりしませんか?
毎年、取引残高証明書や株主総会案内などが送られてくると思いますので、一度きちんと整理してみましょう。
そして預貯金口座と同じように、金融機関名と口座情報を書きます。
どこの会社に保有しているか、ということが分かればよいので、残高や取引の内容は書かなくて構いません。
⑶保険契約について
生命保険、損害保険など、契約の類もエンディングノートに整理しておくと、のちのちご家族が助かります。
引き出しや棚をかき回して、保険証券を探し回る…ということをせずに済むよう、一度重要書類の保管場所を見直すとともに、どんな保険に入っているか、も一覧にしておきます。
そうすれば保険金請求や解約手続きの際、ずいぶんと時間短縮ができるでしょう。
意外と、掛け捨ての保険や少額の保険に入っていたりすることが多いものです。
保険会社から送られてきた書類等を整理して、これらはエンディングノートのクリアファイルに入れておいても良いですね。
⑷リストができたら見直しを
こうしてリストアップできた後、あまりに数が多いなと感じたり、全く使っていない口座があったりするのに気が付いたり…金融資産についてひと目で分かるようになる。
これもエンディングノートに書いていく利点のひとつです。
金融口座の相続はなかなかに面倒な手続きですので、もしも不要な口座があった場合は、解約するなどして少しずつ減らしていくと良いのではと思います。
そしてエンディングノートに記載した後に、口座を解約したり、変更があったときは、エンディングノートも訂正しておきましょう。
将来、「エンディングノートには書いてあるのに、遺言書には書いてない」ということになると、有るのか無いのか?と疑問が生じてしまいます。
この点にはご注意ください。
3.不動産をお持ちの場合
次に多くの方に関係してきそうなのが、「不動産」についてです。
不動産を所有している方は、いま一度権利書などがどこにあるのか確認してみることをおすすめします。
そして、保管場所についてはノートには書かず、家族の方に伝えておくとか、家族の方なら分かる場所に保管しておくなどしましょう。
不動産に関しての正確な記載は、遺言書を書くときに登記事項を確認するなどしますので、まずはどんな不動産を所有しているか、を書き出してください。
お住まいの自治体の中であれば、一度に確認できるのですが、住んでいる市区町村外の不動産ですと存在を知っていなければ見落としがちです。
また、親や親族から相続し、そのままになっている不動産があれば、登記がどうなっているかは確認しておきましょう。
2024年から相続登記が義務化されています。
「自分には必要のない不動産だし、活用法もないから放置しておけば良い」ということはなく、そのままではご家族がそれを引き継ぐことになります。
負担の先送りではなく、今のうちに登記をするなり、処分を考えておきましょう。
ひとりでやるのが大変なら、専門家の力を借り、ご家族とも相談しながら、モヤモヤを解消してしまいましょう。
収益用の賃貸物件や、今のお住まいや駐車場が賃貸であれば、記しておきます。
物件の情報とあわせて、仲介している不動産業者、担当者なども書いておくと、遺言書には書けないけれど、家族にとってはありがたい情報となります。
4.その他にも財産となるもの
「財産」と聞いてぱっと思い浮かぶ大きなもの以外にも、以下のようなものはリストにしておくと良いです。
・自動車やバイク
・ゴルフ会員権
・金貨や銀貨
・絵画などの美術品
・宝飾品やブランド品
車やゴルフ会員権については名義変更などの相続手続きが必要になりますし、その他の財産については、価値が分からなければ、その後の処分に迷うところがあります。
鑑定書などがあれば添えておくと、「価値がない」と思い込んで捨ててしまった…なんていうことは防げますね。
5.最後に一番大事な財産について
これはぜひエンディングノートで整理しておいていただきたいですし、遺言書にも記載することになります。
マイナスの財産、つまり借金や債務のたぐいです。
銀行や金融業者から、知人から、親族からお金を借りているとか、誰かの保証人になっているとか、そういった情報はいち早くご家族が知るべき情報です。
予想外の負担を背負わせることのないように、できれば生前に伝えておきましょう。
もしもそれが出来ないのであれば、せめてあなたに何かあったときにはすぐに伝わるよう、まずはエンディングノートに書いておきましょう。
負債をも含めた遺産を受け継ぐかどうかということは、相続が開始されてから3か月以内に決めなければならないこと、とされています。
相続放棄や限定承認の判断に直結するため、情報の有無が大きな影響を与えることになります。
ご家族のためにも、負債に関することは正直に伝えておくべきですし、ご家族には知る権利があると思います。
書くこととしては、
・借入先
・総額と残高
・返済期限など…
5.まとめ:これらはすべて遺言書の土台となります
今回はかなりボリュームのある回になってしまいました。
最後までお読みいただいた方、ありがとうございます。
たくさん、あれもこれもと書いてきましたが、もちろんいっぺんに書く必要はありません。
少しずつ、ご自分のペースで、整理していってください。
こうして労力と時間をかけて作ったノートが、自分の頭の整理にもなり、実際の資産の整理に役立ち、ご家族の助けにもなることでしょう。
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