土地や建物といった不動産の取引には、大きな金額が動きます。
その割に、一般の人には取引の機会がそう多くないこともあり、知識や情報が不足している面が多分にあります。知識や情報、経験も不足しているとあっては、万が一、質の悪い業者と取引をすることになってしまった場合、大損害を被ることがないとは言えません。
そこで一般消費者が不動産取引において不当に不利益を被ることがないよう、事業として不動産を取り扱う側に免許制度を設けているのです。
目的
宅地建物取引業法第1条
「この法律は、宅地建物取引業を営む者について免許制度を実施し、その事業に対し必要な規制を行うことにより、その業務の適正な運営と宅地及び建物の取引の公正とを確保するとともに、宅地建物取引業の健全な発展を促進し、もって購入者等の利益の保護と宅地及び建物の流通の円滑化とを図ることを目的とする」
この法律の目指すところは、以下の2点です。
①購入者等の利益の保護
②宅地及び建物の流通の円滑化
そのために悪質な業者の流入を防ぎ、購入者を保護し、業界の健全な発展を促すために免許制度を実施しているのです。
宅地建物取引業とは
一般的に不動産業という言われ方をしますが、以下の取引を扱う業種を指します。
①宅地や建物(建物の一部を含む)の売買や交換
②宅地や建物(建物の一部を含む)の売買、交換、賃借の代理や媒介
ただし自己物件を自ら賃貸人となって貸し出すことは、宅地建物取引業法の対象から除外されています。その理由は、賃借人保護の観点から、民法の適用によって解決を目指す方が適しているからです。
宅地建物取引業の免許権者
国土交通大臣➡2つ以上の都道府県の区域内に事務所を設置する場合
都道府県知事➡1つの都道府県の区域内にのみ事務所を設置する場合
「事務所」とは本店または支店、その他継続的に業務を行うことができる施設を有する場所で、宅地建物取引業に係る契約を締結する権限を有する使用人を置くもの、となっています。
また「現地案内所」「住宅展示場」なども、そこで契約等の手続きを行うのであれば「事務所」に入ることになります。
宅地建物取引業の免許概要
- 免許の有効期間は5年間で、更新制。
- 免許の更新申請を行った場合で、有効期間満了日までにその更新がなされない時は、従前の免許は有効期間満了後も、申請に対する処分がされるまでは有効。
- 前項の場合に免許の更新がなされた時は、新しい免許の有効期間は、従前の免許の有効期間満了日の翌日から起算。
- 新規申請の場合は所定の登録免許税を、更新の場合は更新手数料を納付。
- 無免許営業の場合、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金又はその併科。
- 登録事項に変更があった場合、もしくは廃業する場合は30日以内に届出。
宅地建物取引業の免許基準
以下に該当するものは免許を受けることができません。
- 破産手続開始決定を受けて復権を得ない者
- 宅地建物取引業免許の取消を受けて5年経過しない者
- 免許取消処分にかかる聴聞手続中に免許を返納し、5年経過しない者
- 禁固以上の刑に処せられ5年経過しない者
- 禁固以上の刑の執行猶予を受け、期間が満了してから5年経過しない者
- 特定の罪(傷害、暴行等)で罰金刑に処せられ、または猶予期間が満了してから5年経過しない者
- 暴力団関係者
- 申請以前5年の間に宅地建物取引業に関し不正又は著しく不当な行為をした者
- 宅地建物取引業に関し不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者
- 成年被後見人、被保佐人
- 未成年であって法定代理人が上記各号に該当する者
- 役員または政令使用人のうちに①~⑩に該当する者があるもの
- 定められた専任の宅地建物取引士を置くことができない者
まずはじめに、上記の欠格事由に該当する者がいないかどうか、確認しておきましょう。
宅地建物取引業の免許要件
要件1:専任の宅地建物取引士の設置
各事務所において業務に従事する者5名に1名以上の割合で専任の宅地建物取引士を置かなければなりません。もしも不足した場合は2週間以内に補充等必要な措置を取らなければならないとされています。
この専任の宅地建物取引士については、法人の監査役は兼ねることができず、また常勤性と専従性の要件を満たす必要があります。
要件2:事務所の設置
社会通念上、事務所として認識されうる程度の物理的独立性が求められています。
そのためマンションなどの集合住宅の一室、シェアオフィス、他社との共同オフィス、テントやコンテナなどは事務所としては認められません。
登記簿上本店となっている場所においては宅地建物取引業を行わず、支店のみで営業する場合であっても、本店も事務所要件を備え、専任の宅地建物取引士を置く必要があります。
要件3:営業保証金の供託
宅地建物取引業を営む事務所ごとに営業保証金を供託しなければなりません。
万が一、取引上の事故が起きた場合に備え、その事故によって生じた債務の弁済を一定範囲で担保するという意味合いがあるからです。
供託すべき金額は、本店(主たる事務所)1,000万円、支店等(従たる事務所)500万円となっています。
要件4:保証協会への加入
営業保証金の供託に代えて、「全国宅地建物取引業保証協会」もしくは「不動産保証協会」への加入によっても免許申請は可能です。
保証協会へ支払う弁済業務保証金分担金は、本店(主たる事務所)60万円、支店等(従たる事務所)30万円で、これ以外に別途加入金が必要となっています。
営業保証金を供託する場合と比べると、かなり金額が低く抑えられていますので、実際にはこちらの方法を取ることが多いようです。
宅地建物取引業の免許申請の流れ
以下は、営業保証金の供託に代えて、保証協会に加入する、という場合の流れになります。
免許取得後の届出
一度、免許申請をして免許が下りたとしても、その後営業を続けていくのであれば、定期的に届出が必要な事項があります。
(A県知事→B県知事、知事→大臣、大臣→知事の免許権者変更による手続き)
速やかに変更の届出を行うこと。
まとめ
宅建業の免許申請には、事務所を構え、専任取引士を雇い、多額の資金を準備する必要があります。
また営業開始後も、届出とは縁が切れません。
本業に専念していただくためにも、宅建業に関する各種申請手続きには行政書士を活用してください。
要件の確認から、スムーズな申請手続き、何か変更があった際の届出まで、一貫してお任せいただけます。
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行政書士わかぞの事務所