親亡き後問題、障害のある子を誰が支える!?~成年後見制度の活用場面⑥

親亡き後の障害ある子の備え

事務所概要

行政書士わかぞの事務所
代表者 若園しのぶ
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休業日 土日祝・年末年始
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知的障がいのある子どもと暮らし、通帳の管理や福祉サービスの契約を、ずっと親が代わりにしてきた。
けれど自分たちも年を重ね、「私たちがいなくなったら、この子のお金や手続きは誰が見ていくのだろう」と考えるようになった。

この記事は、精神上の障がい(知的障がいや、のちに発症した統合失調症などを含みます)のあるお子さんを持つ親御さんに向けて書いています。
親が元気なうちに成年後見制度をどう使い、親自身はどう備え、財産の行方をどう決めておくか。
ひとつの家族の流れとして整理します。

この記事を読むと分かること
・親が代わりにしてきたことを、親亡き後にそのまま引き継げない理由
・親が子どもの成年後見人になって支えるということ
・親自身が任意後見制度で備えておく意味
・親が続けられなくなったとき、子どもの後見がどう引き継がれるか
・遺言書で財産の行方を決めておくことの意味

まつ子さん

これまで息子のことは全部私と夫がやってきました。
でも私たちも、いつまでも元気ではいられません…。

目次

1.親亡き後に引き継げない

01.お金の管理、福祉サービスの契約

障がいのあるお子さんの暮らしを支えるために、親が担っていることは少なくありません。
障害年金が入る口座の管理、グループホームや通所先との契約、役所への届出。
どれも、親が「家族だから」と引き受けてきたことです。

ただ、お子さんが成人したあとは、親であっても、お子さんに代わって契約や財産の管理をする法的な立場はありません。
実際には親が担っているご家庭が多くても、それは法的な裏付けのないまま続いている状態です。

親が入院したり、認知症になったり、亡くなったりすれば、その状態は途切れます。
他の家族が同じように引き継げるとは限りませんし、金融機関は、本人の判断能力が十分でない取引や、代理する権限のない家族との取引を、できるだけ避けたいという姿勢をとっています。

老いた親が子のためにあちこち走り回る

02.残された財産の管理

「この子のために、できるだけ財産を残してあげたい」と考える親御さんは多いと思います。
ただ、財産を残しても、お子さんが自分でそれを管理し、必要なことに使っていくのが難しい場合があります。

残した財産を、お子さんの暮らしのために、誰がどう管理していくのか。
親亡き後の備えは、財産を残すことと同じくらい、その管理を担う人を決めておくことが大切になります。

2.親が子どもの成年後見人に

01.成人後は法的な立場で支える

お子さんが未成年のうちは、親は親権者として、お子さんに代わって契約などをすることができます。
けれど、お子さんが成年(18歳)に達すると親権はなくなります。

障がいがあって判断能力が十分でないお子さんを、成人後に法的な立場で支えるしくみが、成年後見制度です。
家庭裁判所が、お子さんに代わって財産の管理や契約をする人(成年後見人)を選びます。

02.親が後見人になるという選択肢

成年後見の申立てをするとき、親を後見人の候補者として挙げることができます。
候補者をそのまま選ぶかどうかは家庭裁判所が決めますが、親が後見人に選ばれれば、それまで「家族だから」と担ってきたことを、法的な立場で続けていくことができます。

お子さんのことをいちばんよく知り、いちばん考えているのは親です。
その親が後見人として支えることには、大きな意味があります。
後見人になると、お子さんの財産を管理し、その状況を定期的に家庭裁判所へ報告することになります。

➡ ただし、親が認知症になったり、亡くなったりすると、後見人を続けることはできません。
親が後見人になっただけでは、親亡き後の備えは終わりません。

助手にゃん子

親が後見人として支えることと、親自身が支えられなくなったときに
備えること。この2つをセットで考えておくことが大切です。

3.親自身の備えは任意後見制度で

01.自分を支えてくれる人を、元気なうちに決める

親自身の備えとして使えるのが、任意後見制度です。
親が元気なうちに、自分の判断能力が落ちたときに財産の管理や契約を任せる人を、自分で選んで契約しておく制度です。
任意後見の契約をしておけば、親が認知症になったときも、親自身の財産の管理や施設の契約などを、あらかじめ選んだ人に担ってもらうことができます。

02.子どもの後見人は親から他の人へ交代

親が認知症になったり、亡くなったりして、子どもの後見人を続けられなくなったときは、家庭裁判所で後見人を交代する手続きを経て、新しい後見人が選ばれます。
親の任意後見とは別の手続きです。

新しい後見人は、親族などの請求により、または家庭裁判所の職権で選ばれます。
そのため、親の任意後見人や身近な親族、子どもを支える支援者に、子どもの後見のことをあらかじめ伝えておくことが大切です。

親が自分で動けなくなったときに、交代の手続きにつなげてくれる人がいれば、子どもの支えが途切れにくくなります。

まつ子さん

私たちが支えられなくなったときに備えて、
次の人につなぐ準備を今からしておく…ということ?

助手にゃん子

そうです。そのためには親自身の備えも必要です。

4.遺言書で決めておくこと

01.遺言書がないとどうなるか

親が亡くなったとき、遺言書がなければ、財産の分け方は相続人全員の話し合い(遺産分割協議)で決めます。
障がいのあるお子さんも相続人のひとりなので、お子さんの後見人が、お子さんに代わって話し合いに加わります。

後見人は、お子さんの利益を守る立場です。

一般に、後見人は、原則としてお子さんの法定相続分を確保することを前提として動きます。
きょうだいがいるご家庭では、たとえば「実家は近くに住む長女に」といった家族の希望どおりには、話がまとまりにくくなることもあります。

02.遺言書があればスムーズ

親が遺言書で、財産全体について誰に何を引き継ぐかを決めておけば、遺産分割の話し合いをせずに、その内容にそって手続きを進めることができます。

お子さんの後見人が、法定相続分の確保を前提に話し合いに臨む、という場面そのものがなくなります。
家族それぞれの暮らしや、これまでの関わりを考えたうえで、親自身が財産の行方を決めておけることが、遺言書のいちばんの役割です。

03.障がいある子が受け取った財産の管理

遺言書で障がいのあるお子さんに引き継いだ財産も、遺産分割で受け取った財産も、お子さんに後見人がいれば、後見人が管理していきます。

お子さんが受け取った財産は、グループホームの費用や医療費など、お子さん自身の暮らしのために使われます。
後見人がいることで、残した財産がお子さんのために使われていく道筋ができます。

5.改正法で変わるこれからの成年後見

01.必要な場面に、必要な権限だけを付ける仕組みへ

2026年(令和8年)6月に、成年後見制度を見直す改正法が成立しました。
後見・保佐・補助の3つを「補助」に一本化し、必要な行為について必要な権限だけを付ける仕組みに改める内容です。

制度を利用する必要がなくなったと家庭裁判所が認めるときは、請求により終了できるようにもなります。
「一度始めたら一生続くのでは」という心配から、成年後見制度を使うことをためらってきた親御さんもいらっしゃると思います。
改正後は、お子さんの状態や暮らしに合わせて、必要な支えを選んでいける仕組みに変わっていく予定です。

02.施行の時期と今からの申立て

施行は遅くとも令和10年(2028年)12月24日までとされており、いまはまだ施行前です。
現時点で申立てをする場合は、現行の制度が適用されます。

ただ、現在すでに利用されている後見等の制度も、これから施行前に申し立てて開始される後見等も、新制度への移行の道筋は用意されています。

今、後見等を必要としている方が、改正法が施行されるのを待つ必要はありません。
ぜひ、自治体の福祉担当窓口、お近くの行政書士事務所などにご相談ください。

6.まとめ

・親が「家族だから」と担ってきた通帳の管理や契約は、親亡き後、ほかの家族がそのまま引き継げるとは限らない。

・子どもが成人したあとは、親であっても代わりに契約や財産の管理をする法的な立場はない。成年後見制度で、親が後見人になって法的な立場で支えることができる。

・親が認知症になったり亡くなったりすると、後見人は続けられない。親自身は任意後見制度で備えておく。

・親が続けられなくなったときは、家庭裁判所で後見人を交代する手続きを経て、新しい後見人が選ばれる。子どもの後見のことを、親の任意後見人や身近な人に伝えておきたい。

・遺言書で財産の行方を決めておけば、遺産分割の話し合いをせずに済む。子どもが受け取った財産は、後見人が管理していく。

・改正法で、必要な場面に必要な権限だけを付ける仕組みに変わる予定。

親が支え、親が支えられなくなったら次の人につなぎ、財産の行方は遺言書で決めておく。
親亡き後の備えは、どれか一つではなく、いくつかを組み合わせて形になっていきます。

すべてを一度に整える必要はありません。
まずは、いま親が担っていることを書き出してみるところから、始めていただければと思います。

全6回にわたって、成年後見制度を使える場面をご紹介してきました。
預金の解約、自宅の売却、契約の取消し、おひとりさまの備え、遺産分割、そして親亡き後問題。

どの場面も、ご本人の暮らしと財産を守るために、制度をどう使えるかという視点でお伝えしてきました。
ご自身やご家族の状況に近い場面があれば、あわせて読んでいただければ幸いです。

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<出典>
民法第4条(成年)、第7条(後見開始の審判)、第818条第1項(親権者)、第843条(成年後見人の選任)、第844条(後見人の辞任)、第846条(後見人の解任)、第859条(財産の管理及び代表)、第907条(遺産の分割の協議又は審判)/任意後見契約に関する法律第2条/民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)

<免責事項>
本記事は、執筆時点の法令にもとづく一般的な情報提供を目的としています。個別の事情によって結論が異なる場合がありますので、具体的なお手続きについては専門家にご相談ください。

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