人が亡くなるとそれは膨大な数の手続き、届出等が発生します。直後は悲しみを抱えて、それらに忙殺される時間が慌ただしく過ぎていくでしょう。
そしてひと段落して「さあ、相続に取りかかろう」と思った時、まずは何から始めればよいのでしょうか?インターネットで検索してみても情報が多すぎて、あれもこれも…と混乱してしまうかもしれません。
そこで「相続の具体的な流れ」を大まかにお伝えします。 まずは頭の整理にお役立てください。
相続とは
「相続」とは亡くなった人の財産、権利、義務などを、残された家族で分け合い、引き継ぐことです。
亡くなった人を「被相続人(相続される人)」、そして引き継ぐ人を「相続人(相続する人)」と呼びます。
残された財産、義務等をまとめて「遺産」と言いますが、必ずしもプラスの財産ばかりでは有りません。中には負債などのマイナスの財産(返済の義務が引き継がれます)や負動産(処分に困る不動産)、なんて言葉も聞いたことがあるかも知れませんね。相続するということはプラスもマイナスも全てひっくるめて引き継ぐということです。
相続には大きく分けて3つの方法があります。法律で決められた通りの割合で引き継ぐ「法定相続」、被相続人の遺言書による「遺言相続」、相続人どうしの協議による「遺産分割協議による相続」です。
法定相続による遺産分割
相続人が一人しかいなければ、その人が全部引き継ぐことになります。
ここでは財産の内容をよく確認して、もし必要であれば相続の放棄、限定承認等の手続きをとることになります。
これは遺産の中に相続人にとって負担となる負債があったり、トラブルの原因になりそうな権利が含まれている…等のケースが考えられます。
プラスとマイナスを比較して、マイナスの方が多ければ検討しても良いでしょう。
ただし、相続放棄するかどうか、限定承認をするかどうかを選べるのは、『自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内』(民法第915条)と決められていますので、その期間内に家庭裁判所で申述をしなければなりません。
相続の流れ
1.遺言書がないかどうか探す
まずは、故人が遺言書を準備していなかったか。書いていたならどこに保管されているのか?遺言書の有無を確認しましょう。遺言書の内容が法定相続に優先するので、遺言書があれば分割協議も必要なくなります。(もちろん例外はありますが)
金庫、仏壇の奥、床下、机の引き出しの奥、ドレッサー等…考えられるところをしらみつぶしに探してみましょう。
公正証書遺言を作成していたなら、公証役場で、法務省の自筆証書遺言書保管サービスを利用していたなら、法務局で、それぞれ検索することができるので、心当たりがある場合は利用してみましょう。
2.相続人の確定
次に相続人の範囲を確定させて、全部で何人の相続人で分割するのかをはっきりさせておきます。
民法で定められた法定相続人の範囲は、常に相続人となる「配偶者」と「一定範囲の血縁関係にある親族(子、親、兄弟姉妹など)」になります。
血族の間の相続順位は以下の通りです。
- 第1順位 亡くなった人の子(実子、養子含む)
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その子がすでに死亡している場合は、その子や孫(直系卑属)となり、両方いる場合は故人により近い世代である子を優先します。
- 第2順位 亡くなった人の父母、祖父母(直系尊属)
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両方いる場合は、亡くなった人により近い世代である父母を優先します。
- 第3順位 亡くなった人の兄弟姉妹
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すでに兄弟姉妹が死亡している場合は、その子が代襲相続人となります。
まとめると……
配偶者と子(孫)がいる→ 「配偶者」+「第1順位の子(孫)」
子(孫)がいなければ→ 「配偶者」+「第2順位の父母(祖父母)」
父母(祖父母)がいなければ→ 「配偶者」+「第3順位の兄弟姉妹」
3.相続財産の調査
被相続人が残した財産は何か?相続人が引き継ぐものは何があるのか?
次はこの相続財産の調査を行いましょう。
住んでいた家、土地、預貯金、株式、貴金属、車等、もしくは未返済のローン、保証債務(誰かの保証人になっている)、不動産の抵当権等、プラスもマイナスも全て洗い出します。
通常、相続人で分割するのはプラスの財産であり、マイナスの財産についてはプラスの相続分に応じて引き継がれることになります。 ここでしっかり調査をしておかないと、後から相続人が知らなかった遠隔地の山林とか、貸金庫でずっと眠っていた権利書…等が発覚したために、分割協議をやり直す羽目になるかも知れません。
4.遺産分割協議をする
相続人が確定して、相続財産の調査・洗い出しが完了したら、いよいよ遺産分割協議を行います。
ここで有効な遺言書があり、その内容に全員同意できれば、その通りに遺産を引き継ぎ、それぞれ名義変更や登記を行うことになります。
ですが遺言書がない場合、遺言書に記載のない財産があった場合、法定相続分とは違う分割を希望する場合、などには相続人同士で分割協議を行います。
また有効な遺言書があったとしても、相続人全員が同意すれば遺言書とは違う分割方法での相続も可能です。
5.遺産分割協議書の作成
分割方法が決まったら、遺産分割協議書を作成します。これは誰がどの財産を、どのくらい相続するかがはっきり記されている公的書類です。
後々に言った言わないのトラブルになるのを避けるためにも、全員で内容を確認し、きちんと書面の形にしておきましょう。
不動産の相続登記や金融機関での解約手続きなど、実際に遺産を分配していく時に提出または提示を求められます。
6.遺産の分配をする
分割協議で決めた通りに遺産を分配していきます。金融機関の凍結された口座を解約して残高を引き出す、または口座の名義を変更する。株式であれば、相続人の口座への移管手続をする。運輸支局で普通自動車の名義変更届をする…など、各所で必要書類を提出して行っていきます。
7.不動産の登記
相続財産に不動産が含まれていた場合は、相続登記の申請が必要です。民法が改正され、令和6年4月1日より不動産を相続したことを知った日から3年以内の登記申請が義務化されています。
義務化以前に相続した未登記の不動産については猶予期間があり、令和9年3月31日までに登記を完了すればよいことになっています。
8.相続税の申告と納付
相続税の申告が必要な場合は、相続の発生したことを知った日の翌日から10か月以内に申告と納付を行う必要があります。
参照:国税庁サイト「令和7年度版暮らしの税情報 財産を相続したとき」
9.その他の届出
相続財産の種類によっては、官公署への届出が必要になります。
具体的には、農業委員会への農地の相続届、相続した不動産が未登記だった場合の税務課への所有者変更届…などです。
まとめ
これまで見てきた手続きはどれも複雑で、提出先が多岐に渡り、日常生活を送りながらこれらを行うのは大変な負担となるでしょう。
そんな時は、ぜひ身近にいる行政書士を頼ってください。
弊事務所では、相続財産の調査から相続人の確定、そして遺産分割協議書の作成、実際の相続手続まで、トータルでサポートいたします。ご相談はお気軽にどうぞ!
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