先日、遺贈寄付をテーマにしたセミナーでお話をする機会がありました。
「自分の財産を、亡くなった後に応援している団体へ託したい」
そう考えたとき、どんな準備が必要なのでしょうか。
当日お話しした内容から、遺贈寄付に関係の深い「相続と遺言の基本」にあたる部分をまとめました。
(当日の録音を基にまとめていますので、会話形式にてお伝えします)
この記事を読むと分かること
・相続と遺言の超キホン的なところ
・「遺贈寄付」に必要な準備
・遺言でできる社会貢献がある
まずはじめに…「遺贈寄付」とは?
今回のテーマは「遺贈寄付」です。まず、なぜ相続や遺言の話から入るのでしょうか。
遺贈寄付というのは、亡くなった方が残した財産からの寄付です。
つまり、相続という場面の中で起きることなんですね。
ですから、その土台にある相続と遺言のしくみを知っておくと、話がぐっと分かりやすくなります。
難しい知識が必要というわけではありません。
ざっと流れをつかんでいただければ十分です。
相続とは、持ち主を決め直すこと
そもそも「相続」とは何でしょうか。
一言で言うと、誰かが亡くなった後に、その人が残した財産や権利、義務といった一切のものを、どなたかが引き継いでいくことです。
物でも権利でも、誰のものかがはっきりしていなければ、動かしたり取引したりできませんよね。
持ち主が亡くなって宙ぶらりんになってしまったものを、次の持ち主がはっきり決まっている状態にしていく。それが相続です。
手続きは、どこから始めるのですか。
最初のステップは、遺言書があるかないかの確認です。ここで道が分かれます。
遺言書がある場合は、基本的にはその内容のとおり、つまり遺言書を残した方の希望どおりに進めていくことになります。
遺言書がない場合は、二つの方法があります。
ひとつは法定相続といって、法律で決められた割合のとおりに分ける方法。
もうひとつが、相続人全員で集まって「誰が何を引き継ぐか」を話し合って決める遺産分割協議です。
遺言書がある場合と違って、こちらは残された人たちの希望で財産のゆくえが決まっていきます。
遺産分割協議をするには、何が必要ですか。
協議の前には各種調査が必要です。
相続人は誰なのか、相続すべき財産には何があるのかを調べます。
具体的には、戸籍を集めたり、登記事項を確認したり、金融機関に問い合わせをしたり、といったことですね。
相続人になれる人、なれない人
相続人の範囲は、どう決まっているのでしょう。
民法で定められています。
基本的には亡くなった方と血のつながりのある方ですが、範囲がきちんと決まっていて、そこに入らない人は、どれだけ関係が深くても、どれだけ長く一緒に暮らしていたとしても相続人にはなりません。
ここは大事なところです。
まず配偶者。血のつながりはありませんが、この方は常に相続人になります。
そのうえで、血のつながりで相続人になる方には順位があります。
⑴第一順位は子。お子さんが先に亡くなっていて、その方にお子さんがいれば、お孫さんが相続人になります。
⑵下の世代がいらっしゃらない場合は上へ行って、第二順位が父母などの直系尊属。父母が先に亡くなっていて祖父母がご存命なら、祖父母が相続人です
⑶下も上もいなければ横へ行って、第三順位が兄弟姉妹。兄弟姉妹は同じくらいのお歳の方が多いですから、先に亡くなっている場合はその子、つまり甥・姪が相続人になります。
兄弟姉妹の横のラインまでたどっても誰もつながる人がいない、という場合は、相続人がいないということになります。
協議がまとまったら、どうなりますか。
決まった内容を遺産分割協議書という書面にまとめて、全員で署名して実印を押します。そこに印鑑登録証明書を添付して完成です。
裏を返すと、ひとりでも「印鑑は押したくない」「印鑑証明は出さない」となると、この方法での手続きはできなくなってしまいます。全員の合意が必要なんですね。
まとまらなかった場合は?
家庭裁判所の調停手続きに進みます。
いきなり裁判官に決めてもらう審判ではなく、まず調停委員を交えて話し合いをします。
それでも合意できなければ審判へ、弁護士を立てて争うケースも時々耳にします。こうなると双方に時間も労力もお金もかかってきます。
「寄付したい」と言っていても、それだけでは届かない
相続人がまったくいない場合は、財産はどうなるのでしょうか?
相続人の代わりに相続財産清算人が選ばれます。
その方を通じて、まず亡くなった方に債務があれば弁済します。借金があれば返す、払っていないものがあれば払う、と全部清算するわけですね。
次に、特別縁故者といって、亡くなった方と特に関係が深かった方や、親身になって療養看護をされたなど貢献が認められる方に、財産をお分けすることがあります。
それを終えてなお残ったものは、国のものになります。
生前「あの団体に寄付したい」と話していた場合でも、ですか?
そうなんです。受け取るべき相続人がいないからといって、その希望どおりになるわけではありません。
何も準備をしていなければ、そのとおりにはならない。
自分の財産のゆくえを決めたいのであれば、遺言という形で残しておく必要があります。
遺言に書けること
遺言には何を書けるのですか。
主なものは自分の財産をどうしたいか、ですが、それだけではありません。
婚外子の認知や、特定の相続人の廃除など、法律で書けることが決まっています。
その中に、相続人以外の方へ財産を譲る「遺贈」と、遺言の内容を実行してくれる「遺言執行者」も含まれています。
逆に言えば、遺言に「遺贈します」と書いていなければ、遺贈は実現しないということです。
遺言書には種類がありますね。おすすめはありますか。
代表的なものを三つあげてあります。
「公正証書遺言」 「自筆証書遺言(自宅保管)」 「自筆証書遺言(法務局保管)」
手続きや費用にそれぞれ違いがあるのですが、選ぶときにいちばん注目していただきたいのは、どの方式なら遺言の内容が実現しやすいかという点です。
せっかく書いてもらったのに実現できなかったら、残念ですよね。
こうしたリスクを低くできて、相続開始後の手続きもスムーズなのが公正証書遺言です。
・費用はかかりますが、公証人という法律の専門家が作成に関与してくれるので、形式的に無効になることはほぼありません。
・内容の相談に乗ってもらえるのが、いちばん大きな利点だと思います。
・公証人と証人2名が立ち会って作成しますから、本人が作った遺言かどうかを疑われることも、まずありません。
ほかの選択肢は。
自筆証書遺言の法務局保管制度も選択肢になると思います。
・自分で作った遺言を法務局に預かってもらう制度で、形式面は確認してもらえますから、無効になるリスクはかなり減らせます。
・もうひとつメリットがあって、預けるときに指定した方へ、亡くなった後に「遺言書が保管されています」という通知を出してもらえる制度があります。
身近に頼れる方がいない、ご親族がいらっしゃらないという方でも、事前に指定しておけば、相続人や遺言執行者にきちんと通知が届くわけですね。
遺贈寄付で気をつけたい二つのこと
遺贈寄付を考えるうえで、特に注意しておきたい点はありますか。
ひとつは遺留分です。
法定相続人に認められた、法律で保障された最低限の取り分のことで、兄弟姉妹以外の相続人――配偶者、子や孫、父母や祖父母に認められています。
この権利は、権利のある方が請求します。
そして請求された側は、お金で支払わなければなりません。
たとえば「全財産を○○という団体に遺贈します」という遺言があって、遺留分の権利を持つ方がいたとします。
その方から団体へ請求が来たら、団体が支払う側になってしまうんですね。
支払える現金があればいいのですが、現物で寄付を受けたのに現金を用意しなければならない、となると困ったことになります。
ですから、遺言を残す際には遺留分に配慮していただくのがいいと思います。
不要なトラブルを避けられますから。
もうひとつは
遺言執行者の指定です。遺言に書かれた内容を実現するために、この方がとても大事なんです。
とくに遺贈は、相続人以外の第三者に財産を残すということですから、遺言執行者が決まっていないと、実際に誰が手続きを進めてくれるのか、という話になってしまいます。
相続人の方とスムーズに連携できる場合ばかりではありませんから、遺贈寄付を考えるなら、遺言と同時に遺言執行者も定めておく。
ここが重要になってきます。
助手にゃん子今日のお話をまとめます。
遺贈寄付は、「そうしたい」という気持ちだけでは形になりません。
相続のしくみを知り、遺言という形で残し、実行してくれる人を決めておく。
その三つがそろってはじめて、想いが届きます。
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