歳をとると誰でも忘れっぽくなったり、ささいなことや、時にはとても大事なことだって思い出せなかったりすることがあります。
それは当たり前のことではあるけれど、やはり生活に支障が出るような状態になってくると、どうにかしなくてはならない…と考える方も多いでしょう。
またはご家族にご高齢の方がいらっしゃって、近くで見守れれば良いけれど、遠方に住んでいてなかなかそうも行かない…こんな場合も、よくあるのではないでしょうか。
ここでは、自分の理解力や判断能力が落ち、一人では銀行の手続きや買い物など日常生活が送れない、そんな状態になる前にできる備えとして、「任意後見契約」について解説します。
任意後見契約とはなんですか?
法律によると以下のように定められています。
「委任者が、受任者に対し、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状況における自己の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務の全般又は一部を委託し、その委託に係る事務について代理権を付与する委任契約であって、第四条第一項の規定により任意後見監督人が選任されたときからその効力を生ずる旨の定めのあるもの」
(任意後見に関する法律第二条第一号)
理解力、判断力が落ちて日常生活が送れないような状態になる前に、ご自分の判断力がしっかりしている内に、信頼できる方に財産管理、事務全般などをお願いしておくのです。
口約束ではなく正式に契約という形で残しておくことで、周りの第三者にも認められるので、本人でなければできない手続きもスムーズに受任者が行うことができます。
任意後見と成年後見はどう違う?
後見というと、成年後見人という言葉の方がよく聞かれると思いますが、実は、任意後見とは成年後見のひとつなのです。任意後見とは別に法定後見制度があります。
法定後見とは、すでに判断能力が低下してしまった後に、ご本人、配偶者等親族、検察官、市町村長等の申立てにより、家庭裁判所にて法定後見人が選任されるというものです。
任意後見との一番の違いは、後見人受任者が決まるのが、後見を受ける人の判断能力が落ちる前か、落ちた後かということ。そして後見を委任する相手を自分で選べるか、そうでないか、ということです。
任意後見制度を活用すれば、ご自分で委任する内容を決め、委任する相手を選ぶことができます。
任意後見契約を詳しく知りたい!
1.任意後見契約を結ぶ方法は?
任意後見契約は、必ず公正証書で契約書を作成しなければなりません。そうしなければ契約としての法的効力は生じません。
ご自分が委任者、お願いする相手が受任者として当事者になります。
受任者にどこまでの権限を持たせるかはご自分で決められます。
もしも自分で判断できなくなった時のことを考え、安心できるように内容を考えましょう。
そして公正証書としたのち、公証人から法務局へ任意後見登記が申請されます。
2.任意後見契約が開始するときはいつ?
契約を結んだ後、ご本人の判断能力が落ちてきたときは、ご本人、親族、後見受任者などが家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立てます。
そして監督人が選任されたときから、任意後見が開始されます。
3.任意後見契約書に記載することは?
対象となる財産の範囲
どこまでを後見人に管理してもらうのか、財産の範囲を決めます。
権限の範囲
どこまでを後見人に代わりにやってもらうのか、代理権を付与する範囲を決めます。
報酬の規定
後見人の報酬の有無、有るとすればその金額を書かなければなりません。
4.任意後見が終了するときはいつ?
任意後見契約は、ご本人、又は任意後見人が死亡・破産すると契約が終了します。
また任意後見人が認知症などで被後見人等になったときも同様です。
契約を結ぶときのポイント
任意後見契約は、ご自分がしっかりしている内に、ご自分の判断で結ぶものであり、その効力が生じるのはご本人の判断能力が低下した後、ということになります。
「まだ後見人にお世話になるほどではないけれど、いろいろと心配だし、自分で判断能力が落ちてきたかどうかが分からないかも知れない…」そんな不安も当然だと思います。
その不安を解消するためには、任意後見が開始されるまでの間も、何らかの備えを組み合わせておく方法が考えられます。具体的には、見守り契約、財産管理契約、任意代理契約などがあります。
まとめ
元気なうちに備えておくことで、結果的にその制度を利用せずに済んだとしても、安心して過ごすことができるようになると思います。
ぜひご自分に合った方法を考えて、必要であれば専門家のアドバイスも受けながら、老後の備えとしてください。
行政書士は契約書の作成においてはもちろん専門家ですが、どんな方法があなたに合っているか、さまざまな選択肢を示してアドバイスを行うことができます。
何か聞いてみたいこと、疑問に思うことがあれば、いつでも行政書士わかぞの事務所へご連絡ください。一緒に考えましょう。
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